パーソナルジムの売却・M&A・居抜きとは?閉店前に売る選択肢と流れ

パーソナルジムの売却・居抜き。閉店する前に売る選択肢

パーソナルジムをやめるときは、閉店するだけでなく、会員ごと売る事業譲渡や、内装を次の借り主に引き継ぐ居抜きで手放す方法があります。

閉店には原状回復やマシンの処分、前払い料金の返金といった費用がかかりますが、売却や居抜きならその一部を抑えられることがあるためです。閉店ラッシュの実態から、閉店にかかる費用、売却と居抜きの進め方、価格を左右するポイントまで整理しました。

ラッコ大福帳

–この記事を書いた人–

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事業売買プラットフォーム「ラッコM&A」の運営を担当しています。ラッコM&Aは2020年にサービスを開始し、これまでの累計成約数は7,000件以上です。Webサイトに加えて店舗などの事業・会社の売買にも取扱いを広げるなかで、売り手が手放す前に準備しておくべき点を見てきました。記事では、売却の良い面だけでなく、貸主の承諾や会員への対応でつまずきやすい点もあわせて書いています。

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パーソナルジムの閉店ラッシュはなぜ起きている?

パーソナルジムの閉店ラッシュが起きる理由を示す見出し画像。参入しやすさ・会員の定着・コストの上昇

パーソナルジムの閉店が相次いでいるのは、少ない資金で開業できるぶん店が増えすぎ、集客と会員の定着で行き詰まる店が出ているためです。

帝国データバンクの集計では、フィットネスクラブ事業者の倒産は2026年1〜7月に23件判明し、年間で過去最多だった前年の同じ時期(19件)を上回りました。23件のうち6件がパーソナルジム業態で、前年に続き高い水準です。設立から10年未満の事業者が6割超を占め、集客の基盤が弱い新しいジムの破綻が目立つとされています。

帝国データバンクが挙げる要因中身
参入しやすさマンションの一室と最低限の設備で開業でき、トレーナーの独立が相次いでいる
会員の定着入会金無料などのキャンペーンが当たり前になり、正規の料金になると辞める会員が多い
短期集中型の限界短期で結果を出すコースは顧客が離れやすく、収益が安定しにくい
コストの上昇人材不足による人件費の上昇や光熱費の増加が、会員収入の伸びを上回る例が増えている

参考:帝国データバンク「フィットネスクラブの倒産動向(2026年1-7月)」(負債1,000万円以上・法的整理による倒産が対象)

倒産として数えられるのは負債1,000万円以上の法的整理だけで、自主的に店を閉めたケースは含まれません。実際に閉じたジムは、倒産の件数よりずっと多いと見ておくのが自然です。

パーソナルジムの廃業率は公表されていない

パーソナルジムだけを切り出した廃業率の公的な統計はありません。「開業から1年で大半が閉店する」といった話を見かけることがありますが、出典が確かめられない数字は判断の材料にしないほうが安全です。

実態をつかむなら、上のような信用調査会社の倒産データと、自分の店の数字を見比べるのが近道です。パーソナルジム経営の収益の仕組みと別の会社の倒産データはパーソナルジム経営の記事で紹介しています。

もう閉めるしかないと思っていたのですが…

閉める前に、会員や設備ごと引き継いでくれる相手がいないかを探す方法もあります。まずは閉店にかかる費用を知っておきましょう。

パーソナルジムの閉店・廃業にかかる費用と手間

パーソナルジムの閉店・廃業にかかる費用と手間を示す見出し画像

パーソナルジムを閉店するときは、物件を元に戻す工事、マシンの処分、会員への返金など、売上がない状態で出ていく費用がまとめてかかります。

パーソナルジムを閉店するときにかかる費用と手間の一覧図。原状回復工事、解約の予告期間の家賃、マシンの処分・リースの残り、前払い料金の返金、トレーナー・スタッフへの対応
費用・手間中身
原状回復工事床の補強・防音・鏡・シャワーなどを撤去し、借りたときの状態に戻す
解約の予告期間の家賃賃貸借契約で決められた予告期間ぶんの家賃は、営業をやめても払い続ける
マシンの処分・リースの残り重いマシンの搬出・処分費。リース中なら残りの支払いや解約金
前払い料金の返金回数券やコースの残りを、会員にどう返すか
トレーナー・スタッフへの対応雇用契約や業務委託契約の終了の手続き

なかでも重いのが原状回復です。床の補強や防音工事をしたジムほど撤去の範囲が広くなり、費用もかさみます。解約の予告期間は契約書によって違うため、閉店を考え始めた時点で、まず賃貸借契約書の解約条項と原状回復の範囲を確認してください。

前払いのコース料金が残っている会員には、返金するか、ほかの店で残りを受けられるようにするかを決める必要があります。返金が重なると、閉店の直前に手元の資金が一気に減ります。廃業の手間や費用感は廃業とは何かを解説した記事でも詳しく整理しています。

閉店以外の3つの選択肢

閉店以外の3つの選択肢を示す見出し画像。事業譲渡・居抜き・マシンだけ売る

閉店のほかには、会員と設備ごと売る事業譲渡、内装を次の借り主に引き継ぐ居抜き、マシンだけを売る方法の3つがあり、引き継げるものの範囲が違います。

パーソナルジムを手放す方法の比較図。事業譲渡は会員・トレーナー・内装・マシンを引き継ぎ、居抜きは内装・設備を次の借り主へ、マシンだけ売るはマシン・器具のみ

3つの方法のどれを選ぶかは、店に利益や会員が残っているかと、内装やマシンをどこまで引き継げるかで決まります。

方法引き継ぐもの向いている店
事業譲渡(M&A)会員・トレーナー・内装・マシン・予約や集客の仕組み会員が残っていて、利益が出ている、または出せる見込みがある
居抜き(造作譲渡)内装・設備(会員は引き継がない)会員は少ないが、内装に手を入れていて次の借り主に価値がある
マシンだけ売るマシン・器具立地や内装に引き継ぐ価値がなく、閉店は避けられない

会員が残っているなら、まず事業譲渡を検討する価値があります。会員や売上ごと引き継げれば、内装やマシンの処分を避けられるだけでなく、会員の通い先も残せます。会員が少ない場合でも、居抜きで内装を引き継げれば、原状回復の費用を抑えられることがあります。

マシンだけ売るときの注意

閉店が避けられない場合でも、マシンや器具を中古の買取業者やほかのジムに売れば、処分費を抑えたり、いくらかの現金に換えたりできます。ただし、リース中のマシンは自分の持ち物ではないため売れません。重いマシンは搬出に費用がかかるため、買取の見積もりでは搬出費の負担がどちらになるかも確認しておきましょう。

パーソナルジムを買うのはどんな人?

パーソナルジムの買い手を示す見出し画像。近くの同業者・独立したいトレーナー・異業種の事業者

パーソナルジムの買い手は、近くで店を増やしたい同業者、独立したいトレーナー、ジムを新しい事業に加えたい異業種の事業者の3つに大きく分かれます。

買い手買う理由と重視する点
近くの同業者新しく出店するより早く店を増やしたい。会員数と立地を重視する
独立したいトレーナーゼロから開業するより、設備と会員がある店から始めたい。価格と会員の引き継ぎを重視する
異業種の事業者整体院やピラティススタジオなどが、運動指導を事業に加えたい。設備と立地を重視する

どの買い手を想定するかで、伝えるべき強みが変わります。同業者には会員数と利益を、独立したいトレーナーには始めやすさと引き継ぎの手厚さを、異業種には設備と立地の良さを示すと、話が進みやすくなります。新しく開業する場合との比べ方はパーソナルジムの参入方法の比較で紹介しています。

パーソナルジムを売却(M&A)する流れ

パーソナルジムを売却する流れを示す見出し画像

パーソナルジムを事業譲渡で売るときは、数字と契約の資料をそろえるところから始め、買い手との交渉を経て、会員とトレーナーを引き継ぐまでが一連の流れです。

パーソナルジムを売却する5つのステップの流れ図。資料をそろえる、価格の考え方を知る、買い手を探す、交渉して契約、会員とトレーナーを引き継ぐ

STEP1:売るための資料をそろえる

買い手が最初に知りたいのは、いくら売れていて、何人の会員が続いているかです。次の資料を、少なくとも直近1年分そろえておきましょう。

資料中身
月別の売上と経費家賃・広告費・人件費・リース代などの内訳
会員の推移月ごとの在籍会員数・新規入会・退会の数、前払い残高
契約書賃貸借契約、マシンのリース契約、トレーナーとの契約
設備の一覧マシン・器具の種類と購入時期、所有かリースか
集客の経路ホームページ・SNS・地図検索の店舗情報・予約システムのアカウント

STEP2:価格の考え方を知る

小さな事業の売却価格は、一般に毎月の利益をもとに評価され、そこに設備や立地の価値が加味されます。利益が出ていない場合でも、内装やマシン、会員がそろった状態に価値を感じる買い手がいれば、値段がつくことがあります。価格を左右するポイントは後ほど詳しく紹介します。

STEP3:買い手を探す

買い手の探し方は、M&A仲介会社に頼む方法と、売り手と買い手が直接やりとりするM&Aプラットフォームに掲載する方法があります。仲介は手厚いサポートを受けられる一方で手数料が高くなりやすく、プラットフォームは手数料を抑えやすい一方で自分で動く場面が増えます。違いはM&A手数料相場の記事で計算例とともに比べています。

STEP4:交渉して契約を結ぶ

買い手が決まったら、価格と、何をどこまで引き継ぐかを詰めて契約を結びます。前払い料金の残りをどちらが引き受けるか、元オーナーがいつまで指導に入るかなども、この段階で書面にしておきましょう。事業譲渡の仕組みは事業譲渡とは何かを解説した記事で整理しています。

STEP5:会員とトレーナーを引き継ぐ

契約後は、会員へのお知らせ、トレーナーとの契約の切り替え、予約システムや集客アカウントの名義変更を進めます。元オーナーが看板トレーナーだった店は、一定期間一緒に指導に入ると会員が離れにくくなります。

ラッコM&Aは、Webサイトに加え、店舗などオフライン事業・会社の売買(事業譲渡・株式譲渡など)にも対応しています。売主は案件登録から成約まで無料で利用できます。

ラッコM&Aで売却の流れを確認する

居抜きでパーソナルジムを手放すときの注意点

居抜きでパーソナルジムを手放すときの注意点を示す見出し画像。貸主の承諾・リースのマシン・造作譲渡と原状回復

居抜きで手放すときは、貸主の承諾と、どの設備を誰に引き継ぐかを書面で確かめておくことが欠かせません。

貸主の承諾が必要

借りている物件の権利を次の借り主に譲るには、貸主の承諾が必要です。民法は、賃借人が賃貸人の承諾を得なければ賃借権を譲り渡せないと定めています。貸主が新しい借り主と改めて契約を結ぶ形になることも多いため、次の借り主を探す前に、貸主に居抜きでの引き継ぎを認めてもらえるかを相談しておきましょう。

参考:e-Gov法令検索「民法」第612条

リースのマシンは勝手に譲れない

リースで借りているマシンの持ち主はリース会社です。居抜きで残していく場合は、リース会社に名義の切り替えができるかを確認するか、残りの支払いを済ませて自分の物にしてから譲る必要があります。どの設備が自分の所有で、どれがリースかを一覧にしておくと、交渉がスムーズです。

造作の譲渡と原状回復の扱いを決める

内装や設備(造作)を譲るときは、何を残し、いくらで譲るかを造作譲渡の契約で決めます。あわせて、次の借り主が退去するときの原状回復を誰が負うのかも、貸主を交えて確認しておくとトラブルを防げます。店舗の居抜きの流れは居抜き売却の記事で詳しく整理しています。

パーソナルジムの売却価格を左右するポイント

パーソナルジムの売却価格を左右するポイントを示す見出し画像

パーソナルジムの売却価格は、毎月の利益の安定と、会員とトレーナーがそのまま残るかどうかで大きく変わります。

ポイント買い手が見ること
利益の安定月ごとの利益が1年を通してどれくらい出ているか。季節の波
会員数と継続在籍会員数と、何か月続いている会員が多いか。前払い残高の大きさ
トレーナーが残るか元オーナー以外のトレーナーがいるか、譲渡後も働き続けてくれるか
賃貸契約の残り契約期間がどれだけ残っているか、更新できるか
設備の状態マシンの年式と状態、リースの残り、内装の傷み

特に元オーナー1人で指導している店は、オーナーが抜けると会員が離れやすいと見られ、評価が下がりがちです。売るまでに時間があるなら、トレーナーを育てたり、元オーナーが一定期間指導に残る条件を示したりすると、買い手の不安を減らせます。

閉店を決めてから慌てて売りに出すより、会員と利益が残っているうちに動くほうが、選べる相手と価格の幅が広がります。

売る前にできること

売りに出すまでに少し時間があるなら、買い手が判断しやすい状態に整えておくと評価が上がりやすくなります。月別の売上と会員数を同じ形式で記録する、使っていない広告や契約を整理して固定費を下げる、予約システムや集客アカウントを店の名義にそろえる、といった準備は費用をかけずにできます。どれも買い手が引き継いだ後の姿を想像しやすくするための準備です。

会員とトレーナーがいるうちなら、店ごと引き継いでくれる相手が見つかる可能性も広がります。

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パーソナルジムの売却・閉店のよくある質問

Q. 赤字のパーソナルジムでも売れますか?

A. 赤字でも、内装・マシン・会員に価値を感じる買い手がいれば売れることがあります。

新しく開業するより安く始めたい人や、近くで店を増やしたい事業者にとっては、設備と会員がそろった店に価値があります。ただし価格は利益が出ている店より低くなりやすいため、赤字の理由と改善できる点を説明できるようにしておきましょう。赤字の会社の売却については会社売却の相場の記事でも解説しています。

Q. 個人事業でも売却できますか?

A. 個人事業でも、事業譲渡の形でジムの設備や会員を引き継いでもらえます。

法人の場合は会社ごと売る株式譲渡も選べますが、個人事業の場合は、事業に使っている資産や契約を一つずつ買い手に引き継ぐ事業譲渡になります。賃貸借契約やリース契約は名義が個人なので、それぞれ貸主やリース会社の承諾が必要です。

Q. 会員にはいつ知らせればいいですか?

A. 売却する場合は、買い手と契約を結び、引き継ぎの段取りが決まってから知らせるのが一般的です。

交渉中に知らせると、話がまとまらなかったときに会員が離れてしまうおそれがあります。閉店する場合は、前払い料金の返金や他店の紹介の準備を整えたうえで、余裕を持った日程で知らせましょう。

Q. 閉店と売却では、手元に残るお金はどう変わりますか?

A. 売却できれば、閉店でかかる原状回復や処分の費用を減らしたうえで、譲渡代金を受け取れることがあります。

閉店は費用が出ていくだけですが、売却なら費用の一部を買い手に引き継いでもらえる可能性があります。ただし、売却には買い手探しや交渉の時間がかかり、その間の家賃も発生します。閉店にかかる費用の見積もりと、売れた場合の手取りを並べて比べてみましょう。

Q. 閉店ラッシュはいつまで続きますか?

A. いつまで続くかを示す公的な見通しはありません。

帝国データバンクは、2026年の倒産が年間で40件に達する可能性があるとしています。業界全体の動きより、自分の店の会員数と利益の推移を見て、続けるか、売るか、閉めるかを早めに判断することが大切です。

まとめ

パーソナルジムを閉める前のまとめ図。倒産は1〜7月に23件でうち6件がパーソナルジム業態、閉店には費用がかかる、閉店以外に3つの方法、会員と利益が残るうちに動く、次の一歩は店ごと引き継ぐ相手を探す

この記事のポイント
  • フィットネスクラブの倒産は2026年1〜7月に23件で、うち6件がパーソナルジム業態。参入しやすさと会員の定着が背景にある
  • 閉店には原状回復・マシンの処分・前払い料金の返金などの費用がかかる
  • 閉店以外に、会員ごと売る事業譲渡、内装を引き継ぐ居抜き、マシンだけ売る方法がある
  • 売却価格は利益の安定と会員・トレーナーが残るかで変わる。会員と利益が残っているうちに動く

閉店を決める前に、まずは店ごと引き継いでくれる相手がいないかを探してみましょう。売主は案件登録から成約まで無料で利用できます。

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