【公認会計士】サイト売買の税金・仕訳・勘定科目

サイト売買時の税務処理/経理処理ってどうするの?
いざサイト売買を行ってみたが、どういった勘定科目を使って計上すべきかわからない、税金がどうなるかわからない。もしくはサイト売買を行いたいが、税務上/会計上の処理がわからず参入しづらい。
といったお悩みに対して、具体的な方法を記載いたします。

売買されるWEBサイトは、目的・対象物・規模感が様々です。
WEBサイトの売買にあたってどのような経理処理・税務処理が必要になるか、ここでは具体的にイメージできるよう、ラッコM&Aの取引の大部分を占めるWEBメディア(ブログ/アフィリエイトサイトなど)の売却・購入におけるスタンダードな事例を用いて解説します。

この記事の監修
伊原 良 氏
税理士法人アーリークロス 社員税理士
公認会計士・税理士。法人・個人税務業務、中堅企業への財務コンサルティング業務、事業再生業務など幅広く提供する。


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目次

本記事で使うサイト売買の事例

WEBサイトの売買は一般に「事業譲渡」にあたるケースが大半です。下記事例はまさしくそういった事例に当たり、事業として営んでいたWEBサイトを売買することは事業譲渡にあたります。

  • 対象WEBサイト:キャンプギア・キャンプガイドに特化したWordPressサイト
  • 特徴:大手ASPを活用したアフィリエイトサイト。数万円/月程度の収益があり、経費(サーバー代・ライティング費用など)が1万円/月程度
  • 対価:100万円(消費税抜き)

以上を踏まえて、WEBサイトの売買において必要な仕訳や税務処理を、売主(売却側)・買主(購入側)、法人・個人によって分けて解説いたします。

※事業譲渡にあたらない場合とは、反復継続してサイト売買を行っているケース(運営するためではなく売るためにWEBサイトの開発をしている場合)、購入したWEBサイトを自社の広告宣伝利用することを目的としているケースなどです。

売主(サイト売却側)・法人

法人がWEBサイトを売却した場合は、基本的には上記の通り「事業譲渡」をしたものとして処理がなされます。事業譲渡をすると当該事業に関わる権利義務が包括的に譲渡されることとなります。
仕訳内の資産及び負債は、たとえばサーバー代の前払いや未払い、アフィリエイトサイトからの未収金などが想定されます。
ECサイトを売買する際にその取扱商材(在庫)ごと譲渡する場合にはその在庫や未払金(買掛金)もあることもあるでしょうし、もちろん契約によっては資産も負債も該当がないこともあります。

法人がサイト売却した際の税務上の取扱い

通常の損益に含められ、法人税及び消費税(消費税課税事業者の場合)が課されます。

サイト移行・検収時の仕訳

事業譲渡契約書の締結が為されると、買主によるエスクロー入金⇒双方によるサイト移行⇒買主による検収が行われます。エスクロー口座の資金は買主の預け金であるため、売主側での会計処理は発生しません。

取引完了時の仕訳

買主による検収が完了して売却が確定すると、以下の仕訳が発生します。

譲渡対価以外の資産負債(前払金・未払金・未収金等)が無い場合(例)

最もベーシックなのはこちらです。
WEBメディアの売買においては未収金(ASPからの支払い待ち報酬など)を清算しないことが一般的です。
借方 貸方
未収入金 100万円 事業譲渡益 100万円

譲渡対価以外の資産負債(前払金・未払金・未収金等)がある場合(例)

借方 貸方
未収入金 100万円 資産 30万円
負債 20万円 事業譲渡益 90万円

入金時の仕訳

エスクロー口座から売主口座への入金が完了すると、以下の仕訳が発生します。

売却手数料等の支払いがない場合(例)

ラッコM&Aの場合はこちらです。
ラッコM&Aは売却手数料が無料です。
借方 貸方
預金 100万円 未収入金 100万円

売却手数料等の支払いがある場合(例)

※例として売買手数料10%と想定

借方 貸方
預金 90万円 未収入金 100万円
支払手数料 10万円

売主(サイト売却側)・個人

個人がWEBサイトを売却した場合は、「事業譲渡」と判断されるのであれば「譲渡所得」に含められます。例外的に反復継続してサイト売買を行っているケースなどにおいては事業譲渡と判断されず事業所得または雑所得に含められることもあると考えられます。

個人がサイト売却した際の税務上の取扱い

譲渡所得として確定申告を行います。譲渡所得では当該資産の所有期間に応じて短期譲渡所得と長期譲渡所得とに区別されます。
WEBサイトの制作費用(取得費)やサイト売買手数料(譲渡費用)などについては所得の計算上、売却価額から控除して計算することができます。

買主(サイト購入側)・法人

法人がWEBサイトを購入した場合は、その支出をどう処理するか(ソフトウェア、営業権、費用)と耐用年数をどうするかについて検討が必要になります。

法人がサイト購入した際の税務上の取扱い

営業権(のれん)か否か

さらに事業譲渡の結果承継される資産負債に差額がある場合には、それをどのように処理するかを検討する必要があります。その支出の効果が1年以上見込まれる場合には営業権(のれん)として資産計上した上で減価償却(耐用年数は5年間)することとなります。

ソフトウェアか否か

WEBサイトに含まれる機能に着目してソフトウェアに該当するか否かを判断します。単なるコンテンツとソフトウェアとでは取扱いが異なります。
WEBサイトにEC(検索、購買、決済)機能などの機能がある場合にはソフトウェアに該当する可能性が高くなります。その支出がソフトウェアの取得に該当する場合には資産計上した上で5年間で減価償却することとなります。

金額が小さければソフトウェア扱いにならない

ただしそもそも支出金額が10万円未満(中小企業者等に該当する場合は30万円未満・ただし年間300万円未満までなどの制限あり)の場合にはソフトウェア(固定資産)に計上せず、費用処理することが可能です。

繰延資産か否か

ソフトウェアの検討の他に、税法上の繰延資産に該当するかを検討する必要があります。
税法上の繰延資産は「法人が支出する費用のうち支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶもので政令で定めるもの(自己が便益を受けるために支出する費用))」とされています。
ソフトウェアに該当する機能を有しないWEBサイトの購入対価のうち、このような税法上の繰延資産に該当する部分があれば、その部分については繰延資産に計上し、耐用年数を個別に見積もった上で償却することになります。
なお当該部分が20万円未満であれば少額繰延資産に該当するため一時的に費用(損金)とすることができます。

契約書の締結~代金送金時の仕訳

事業譲渡契約書の締結が為されると、買主はサイト売買事業者のエスクロー口座に代金を送金します。
この時点では移行・検収が完了していないため、前払金として計上します。

譲渡対価と手数料をエスクローで払い込んだ場合(例)

売買代金100万円、手数料5万円
借方 貸方
前払金 105万円 預金 105万円
売買代金15万円、手数料5万円 ※売買代金20万円未満の事例
借方 貸方
前払金 20万円 預金 20万円

取引完了時の仕訳

検収が完了して購入が確定すると、以下の仕訳が発生します。

売買代金20万円未満の場合(例)

借方 貸方
雑費 15万円 前払金 20万円
支払手数料 5万円

売買代金20万円以上の場合(例)

借方 貸方
資産 100万円 前払金 105万円
支払手数料 5万円

営業権(のれん)がある場合(例)

借方 貸方
営業権(のれん) 70万円 前払金 105万円
資産 30万円
支払手数料 5万円

ソフトウェアがある場合(例)

借方 貸方
ソフトウェア 70万円 前払金 105万円
資産 30万円
支払手数料 5万円

繰延資産がある場合(例)

借方 貸方
繰延資産 70万円 前払金 105万円
資産 30万円
支払手数料 5万円

上記で負債がある場合(例)

借方 貸方
資産 120万円 前払金 105.5万円
支払手数料 5.5万円 負債 20万円
借方 貸方
営業権(のれん) 70万円 負債 20万円
資産 50万円 前払金 105.5万円
支払手数料 5.5万円

※ソフトウェア・繰延資産の場合も同様

買主(サイト購入側)・個人

税務上の取扱い

基本的には法人と同様に検討した上で処理します。ソフトウェアや営業権(のれん)、繰延資産については、減価償却費を必要経費に算入します。

出金時の仕訳

譲渡対価を払い込んだ場合(例)

借方 貸方
前払金 100万円 預金 100万円

③売買取引時(サイト移行・検収完了時)の仕訳

営業権(のれん)がある場合(例)

借方 貸方
営業権(のれん) 90万円 負債 20万円
資産 30万円 前払金 100万円

ソフトウェアがある場合(例)

借方 貸方
ソフトウェア 90万円 負債 20万円
資産 30万円 前払金 100万円

繰延資産がある場合(例)

借方 貸方
繰延資産 90万円 負債 20万円
資産 30万円 前払金 100万円